第17回読売療育賞にあしかが通園センター (2021年10月)
重症心身障害者施設の優れた実践研究を表彰する「第17回読売療育賞」(読売光と愛の事業団主催)に、プロジェクターを活用した多重感覚環境作りを試みた「あしかが通園センター」(栃木県足利市)が選ばれました。記念のトロフィーと助成金50万円を贈ります。奨励賞(助成金30万円)には、「長岡療育園」(新潟県長岡市)、「療育センター きぼう」(群馬県みどり市)、「東部島根医療福祉センター」(松江市)の3施設の研究が決まりました。
読売療育賞はこれまで10月に開催される重症心身障害療育学会学術集会に合わせて、学会誌に掲載された実践研究を対象に同学会の選考委員会で決定していました。昨年は新型コロナウイルスの感染拡大で学術集会自体が中止となり、今年は初めてオンデマンドで10月7~13日に実践研究を配信し、選考委員がオンライン上の会議で話し合って決めました。また、名称も最優秀賞を読売療育賞とし、敢闘賞は奨励賞に変更しました。
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プロジェクターを活用した多重感覚環境作り
読売療育賞に選ばれた「あしかが通園センター」の研究は、施設内で映像や音楽、香り、手作りの品々の手触りなどによる多重感覚環境を設定し、利用者によりリラックスしてもらえるようにしたものです。
担当したのは、いずれも保育士の坂井千明さん(32)、山形陽一さん(42)で、施設の利用者37人のほか、職員14人も協力しました。同園では、2019年、セイコーエプソンがプロジェクターなどを活用して施設などに提供する「ゆめ水族園」が開催されました。提供された空間は多重感覚環境の効果と類似していたことから、施設にあるプロジェクターや自作の感覚素材を活用し、似たような環境を再現しようとしました。
研究期間は、同年4~11月の計13回。うち半年は海をテーマに11回実施しました。浜辺、感触、海中の3エリアに区切り、それぞれ映像や波の音などのBGMのほか、例えば砂浜を散歩する感触を得るために、硬さの異なるスポンジを布製の袋に入れたものを自作し、その上を利用者に車イスで通過してもらいました。実施のたびに利用者の様子や職員に意見を聞き、改良を重ねました。職員からは「エリアごとに雰囲気が違い、それを利用者も感じ取っていた」「コロナ禍でなかなか出歩けないが、出かける雰囲気に浸れた」などの評価が出されました。坂井さんらは「複数の感覚刺激を設置したことで、利用者から多くの反応が得られた。設定に必要な準備時間は平均30分以内で、日中活動に取り入れやすいものとなった」などと分析しています。
受賞後、坂井さんらは「多重感覚環境設定は今では毎月の活動に盛り込み、定番の活動になっています。また、保護者の方にも体験してもらい、協働で評価・検討を行っています」と話していました。
大スクリーンに映し出された海中の映像を見る利用者ら
活動内容は11月27日の読売新聞栃木県版でも紹介されました。紙面はこちら.pdfから。
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奨励賞 3施設より
3施設の研究内容は読売新聞の地域版で紹介されました。こちら.pdfからご覧になれます。
オンライン面会の効果と課題探求のための調査に取り組んだ
------長岡療育園(新潟県長岡市)
コロナ禍で家族の来園面会が難しくなり、オンライン面会を開始しました。画面上での関わりには限界があり、直接の触れ合いに勝るものはありません。しかし、高齢等の理由で来園面会が難しい家族、遠くに住んでいる家族とのやり取りが可能であり、来園面会とは異なる良さもあります。来園面会が再開となった後も継続していきたいと考えております。
副賞については、オンライン面会で使用する画面やスピーカーや感染対策品の備品に活用できたらと考えております。今回の賞を励みに今後も重症心身障害児者の支援に精進してまいります。
病棟での口腔衛生管理に歯科衛生士を介入させた試みを発表
------療育センター きぼう(群馬県みどり市)
頻回に肺炎による発熱を繰り返す入所者に、歯科衛生士が口腔衛生管理を行うことでの感染症罹患への影響を検証しました。発熱回数が有意に減少したことは、非常に有益だったと考えます。今後も入所者が穏やかな笑顔で過ごす日常が増え、加えて病棟を支える医師、看護師の負担軽減に尽力していきたいと思います。
副賞につきましては、今後の研究に大切に使わせていただければと存じます。本賞の受賞は障害児(者)医療への励みとなるものであり、本事業の継続、発展をお祈り申し上げます。
聴覚障害のあるコルネリア・デ・ランゲ症候群の児に絵カードや写真を活用した意思表示を試みた
------東部島根医療福祉センター(松江市)
この1~2年は、コロナの影響で従来のように定期的な言語聴覚療法ができずもどかしい思いをすることもありました。今まで以上にご家族や他利用所の方々と連携を密にとる必要性を強く感じ、連絡交換ノートを取り入れながら変化点や最近のブーム・好きな遊びといったあらゆる情報の共有を図り取り組んできました。これからも、訓練室だけのやりとりに留まらず、患者様の日々の生活に寄り添った療育を行なっていきたいと思います。