第8回読売福祉文化賞の受賞者・高齢者福祉部門(2010年12月)
▽NPO法人わたぼうしの家(北海道釧路市)
元病院の建物の一角を利用した「地域食堂」は週1回、300円で昼食を提供しています。多い日には高齢者や地域とのつながりが少ない転勤族の母子ら70人が訪れる日もあり、お年寄りらボランティアが腕を振るうキノコご飯や牛乳寒天などの自慢料理に舌鼓を打ち、会話を楽しんでいます。
ほぼ毎週訪れるという1人暮らしの80歳代の男性は「家にいると、情報はテレビだけ。ここは幅広い世代と接点があり、心が休まる」と話しています。
地域交流や高齢者介護などに取り組む「わたぼうしの家」は、地域のお年寄りに「気軽に集って、語って、食べてもらおう」と2004年、地域食堂をオープンしました。今では「お年寄りに面倒を見てもらえる」と、赤ちゃん連れの母親の利用も少なくありません。
「食卓を囲んで会話を楽しむ利用者らと佐々木さん(中央後ろ)」
▽NPO法人高齢者外出介助の会(大阪市)
大阪市中央区松屋町のビル一階にある「からほりさろん」は、高齢者外出介助の会が、地域のお年寄りのために開放しているスペースです。毎月1回開いている食事会では、集まったお年寄りがボランティア手作りの料理を味わいながら、会話を楽しみます。
会は1994年、介助が必要なお年寄りの外出を互いに助け合おうと、理事長の永井佳子さん(69)が知人らに呼びかけて発足しました。2000年の介護保険制度導入で、外出介助の利用数はピーク時の年間450件から10分の1に減りました。
このため、現在の活動は自宅に閉じこもりがちな高齢者が外出を楽しむきっかけになるようにと、サロン運営が中心です。食事会のほか、唱歌を歌う会、大阪の文学を読む会など多彩なイベントを開いており、年間延べ1400人が交流しています。
「食事会で地域の高齢者と交流する永井佳子理事長(右端)ら(大阪市中央区松屋町で)」
▽智頭町百人委員会「コントリビューションの会」(鳥取県智頭町)
中国山地の山あいにある鳥取県智頭(ちず)町で、休耕田を活用して収穫したコメが来年1月、アフリカ・ケニアの児童養護施設に届けられます。この事業に取り組むのは、住民が町に事業を提案する「百人委員会」から生まれた「コントリビューションの会」です。
「食糧難の国を支援することで子どもたちの国際的な視野や思いやりの心を育み、高齢者には子どもたちとの触れ合いを生きがいにしてもらいたい」。会の代表を務める米本ゆかりさん(49)らの熱意が実り、2009年度に町が25万円を予算化。休耕田を借りて今年5月、お年寄りや子ども、鳥取大の教授や留学生らが苗を植え、9月に約600キロを収穫しました。
米本さんは「国際貢献の大切さを町民に知ってもらえた。来年以降も活動を続け、支援の輪を広げていきたい」と話しています。
「オグツ大使(左)に写真を示しながら、活動の様子を紹介する米本さん(中央)ら」