第8回読売福祉文化賞の受賞者・一般部門(2010年12月)
第8回読売福祉文化賞は、全国から105件の応募があり、受賞6団体が決まりました。一般部門は、病床の子どもを励ます活動をしている「日本ホスピタル・クラウン協会」など3団体、今年から新設された高齢者部門ではお年寄りが主役の地域食堂を運営する「わたぼうしの家」など3団体が選ばれました。活動支援金として各100万円が贈られます。地域に元気と笑顔を増やしている活動を紹介します。
▽財団法人現代人形劇センター「デフ・パペットシアター・ひとみ」(川崎市)
人形を操る役者が、身振り手振りでコミュニケーションを取りながら熱のこもった稽古を繰り広げています。やがて人形が生き生きと動き出しました。
NHKテレビ番組「ひょっこりひょうたん島」で有名な人形劇団・ひとみ座を母体にする現代人形劇センターが、国際障害者年の1980年に結成。「せりふに頼らない人形劇をつくろう」と、聴覚にハンデのある人と健常者が共に活動するプロ劇団が誕生しました。
現在の役者6人のうち、代表の善岡修さん(35)ら3人は耳が不自由です。手話や日本舞踊など様々な手法を取り入れ、だれもが楽しめる人形劇の面白さを追求しています。国内外での公演に加え、学校や手話サークルなどを対象にしたワークショップにも精力的に取り組んでいます。
「耳の聞こえない人も楽しめる舞台づくりに余念がないメンバー」
▽ NPO法人日本ホスピタル・クラウン協会(名古屋市)
派手な衣装に赤い鼻をつけた道化師(クラウン)が、入院中の子どもたちを様々なパフォーマンスで喜ばせています。細長い風船をねじって動物を作ったり、皿回しをしたり――子供たちの歓声が病室に響きます。
協会は2005年に設立され、約40人のクラウンが全国約50の病院を回り、長期入院の子供たちを楽しませています。
理事長の大棟(おおむね)耕介さん(41)は03年、クラウンの修業のために訪れていた米国で、ホスピタル・クラウンに出会いました。日本では当初、安全面や衛生面で理解が得られませんでしたが、技術を磨き、仲間を育てることで実績を積み上げました。4年前からは旧ソ連・チェルノブイリ原発事故で後遺症を負った子供たちを訪問するなど、活動は海外にも広がっています。
「ウクライナの病院で、入院中の子供たちを笑わせる大棟さん(今年9月)=日本ホスピタル・クラウン協会提供」
▽ NPO法人エクスクラメーション・スタイル(京都府八幡市)
広さ240平方メートルある工房には、陶器の焼成窯や厨房(ちゅうぼう)が設けられ、知的障害、精神障害を持つ通所者たちが仕事に黙々と取り組んでいます。休憩時間になると一転、にぎやかな談笑に花が咲きます。
「クルー」と呼ばれる通所者が作るのは、せっけん皿など陶器中心の約40品と、飲食店から依頼されたケチャップライスなど、下ごしらえした料理です。品質が認められて大手通販会社に採用されるなど着実に販路は広がっています。
2002年、「ビジネスと福祉の融合」を目標に、既存の福祉作業所に発注する形で事業を始めました。06年にNPO法人化、翌年には障害者就労支援施設となる自前の工房を開きました。副理事長の吉野智和さん(33)は「多くの人が商品を通じ、障害のある人の『仕事力』に気づいてもらえたら」と話しています。
「それぞれの仕事に励むクルー」