過去の受賞者

第13回読売福祉文化賞 受賞6団体を表彰(2015年12月)

  新しい時代にふさわしい福祉活動を実践している団体などを顕彰する「第13回読売福祉文化賞」(読売新聞社、読売光と愛の事業団主催)の受賞6団体が決まり、12月8日に読売新聞東京本社で贈呈式が行われました。各団体の代表者らにトロフィーと活動支援金として100万円が贈られました。読売新聞の記事をもとに受賞団体の活動内容を紹介します。

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        記念のトロフィーを手にする受賞団体代表者ら

【一般部門】

「飛んでけ!車いす」の会 (札幌市)

中古の車いすを新品同様に整備し、旅行者などの手荷物として発展途上国の障害者に届けるボランティア活動を続けています。設立から17年で、届けた先はアジアやアフリカなどの79か国、台数は約2500台にも上ります。1997年、現事務局長の吉田三千代さん(66)はバングラデシュのスラム街を訪れ、車いすが無く遠出が出来ない障害者が大勢いることを知りました。

 一方、日本では中古の車いすが余っていました。手荷物として飛行機にW.JPG
持ち込めば無料で運べると知り、活動を発案。
98年に会を設立しました。

 車いすは、壊れたり病気やけがが治って不要となったりしたものを
病院や老人ホームなどから収集。車いすを求める人の写真などを参考に、体に合うものを選んで整備します。整備や事務のスタッフ=写真=、資金を援助する会員など約250人が活動を支えています。


 整備スタッフの1人の春日佳和さん
(75)は「安心して使ってもらいたい一心で直した車いすの活躍はこの上なくうれしい」と話しています。吉田さんは「家族と一緒に食事できたり、庭に出られるようになったりと、喜びの声を聞く度にうれしい。運ぶだけではなく、壊れても使えるように整備方法も伝えていきたい」と意欲をみせています。

                                


「ことばの道案内」 (東京都北区)

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 視覚障害者向けに駅やバス停から公共施設などへの道順を言葉で説明し、音声をウェブサイトで公開しています。都内を中心に約50人が活動
し、13年間で2000ルート以上を作りました。古矢利夫理事長(67)=写真右手前=は「地道な活動を評価していただいたことがうれしい」と喜びます。


 視覚障害のあるメンバーと一緒に、実際に点字ブロックをたどって目的地を目指しながら
案内ルートを作成しました。目的地の方角や距離、点字ブロックの敷設状況のほか、障害物の有無などの参考情報も録音します。事前に聞けば、道のりをイメージしやすいといいます。

 古矢理事長は40歳代の頃、病気で失明しました。一人で外出できず落ち込んでいましたが、「頭の中に地図を描ければ一人でも歩けるのでは」と音声案内を思いつき、2002年にボランティア仲間らと団体を設立しました。

  

 今年度からは、北区内で点字ブロックの敷設距離を調べたり、磨耗や破損がないかなどを確認したりする活動も始めました。区に結果を報告し、改善してもらうつもりです。古矢理事長は「一人で外出できたことで自信を持ち、就職につながった人もいます。視覚障害者の社会参加のために活動を続けていきます」と話します。

「ぷかぷか」 (横浜市緑区) 


 一般の人たちが障害者と出会い、彼らの魅力に触れてほしいと、特別支援学校に30年ほど勤務した理事長の高崎明さん(66)が、2010年に創設。パン屋、総菜屋、アートショップ、カフェの四つの就労支援施設に40人弱が働いています。
 
 パン屋で仕事中、ずっと歌っている利用者がいます。歌声は店のBGMのようになっており、国産小麦と天然酵母を使用し、具材にもこだわったパンとともに人気だ。カフェでは、「おいしかった」というお客さんの言葉に反応し、厨房から顔を出して「おいしいかい」と声をかけた利用者も。接客マニュアルからは逸脱しているが、ありのままの姿で働き、笑顔が絶えずぬくもりのある店舗は、地域社会にとって"癒される"大切な場所になっています。
 
 昨年11月には利用者と地域の人たちが半年かけて準備した芝居を上演。来年2月に横浜市で谷川俊太郎さんの詩「生きる」をモデルに創作した芝居を発表するため、月1回の練習に励んでいます。高崎さんは「障害者と街の人たちの出会いは、お互いの心、ひいては街そのものを豊かにする。社会的弱者が生きやすい社会は誰にとっても生きやすい社会です」と話します。


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理事長の高崎さん(左端)

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                                創作芝居の発表に向けて練習に励む利用者と地域の人たち

【高齢者福祉部門】

「福祉劇団 鶴亀」 (宮城県柴田町)
                       
 
 ケアマネージャー、ショートステイなどカタカナが多い介護用語。分かりにくいと困惑する高齢者に演劇で理解してもらおうと、1991年に結成しました。東北地方を中心にこれまで330回以上の公演を重ねています。

 代表作「今 とのさま介護中」は、顔を白く塗った殿様が、介護保険の訪問調査を受ける場面を紹介。「耳は聞こえますか」と問われて「悪口だけはよく聞こえる」、「目は見えますか」との質問には「最近、奥方がきれいに見えるようになった」と答えるなどユーモアたっぷり。 

 台本も手がける監督の加茂紀代子さん(77)は「お客さんに心の底から笑ってもらいたい」と話します。車いすを「近代的なかご」と呼ぶことなど時代劇にすることで、実際に介護をしている人にも、日常から離れて楽しんでもらえるようにしています。 

 メンバーは64~85歳の21人。普段は町内の介護施設などでボランティアをしています。1時間にわたる劇でセリフを忘れてしまうこともありますが、客を巻き込んだとっさのアドリブが人気です。加茂さんは「今後は地元の学生たちとも協力し、閉じこもりがちなお年寄りに元気になってもらえる劇を作りたい」と話しています。

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                                      「今 とのさま介護中」の公演

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                                      劇団特製のはっぴを着て受賞を喜ぶメンバー


「神戸定住外国人支援センター」 (神戸市長田区)

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 外国人高齢者も安心して生活できるようにと、2005年、在日コリアンらを受け入れるデイサービスセンターを開設しました。利用者は朝鮮半島に伝わる打楽器「チャング」の音色に合わせて体操し、掲示物にはハングルも。大半が在日コリアンだが、帰国した中国残留邦人やベトナム人、日本人もおり、スタッフを交えて様々な言語が飛び交う。 

 理事長の金宣吉(キムソンギル)さん(52)=写真右=は「異文化で育った高齢者をケアする取り組みは以前、ほとんどなかった」と振り返ります。1995年の阪神大震災後、ボランティアで川崎市から故郷にかけつけた金さんは、自宅を失って各地に転居した在日コリアン1世たちが「1日中、誰とも会わない」と孤立する姿を目の当たりにしました。日本語の読み書きができない人も多く、新たな環境に溶け込むことに苦しんでいました。そこで、99年から在日コリアンが集う会を毎週開き、参加者の高齢化に伴って介護事業を開始。今ではグループホームや小規模多機能型居宅介護の事業所も運営し、国籍を限らず受け入れています。

 金さんは「多民族の人を多民族の人で支えるのが21世紀型の高齢者支援。その価値を多くの人に知ってもらいたい」と願っています。

                                              
  

「中西ヘルスポイント実行委員会」 (島根県益田市)

 益田市中西地区で2011年12月、公民館活動などに参加するとポイントがたまり、地域の朝市などで使える割引券と交換できる仕組み「中西ヘルスポイント制度」を始めました。

 同地区は中山間地域にあり、高齢化率は36.8%。中西公民館が中心となり、高齢者にグラウンドゴルフやパソコン教室など公民館の催しに参加し、健康維持などにつなげてもらおうと始めた。生きがいにもなるだろうと、高齢者自身が育てた農産物などが並ぶ朝市を盛り上げるのも狙いです。

 教室や朝市に参加すると、毎回ポイントカードにポイントに1ポイントが与えられ、10ポイントたまると400円分の割引券と交換できます。老人会の会員には2倍のポイントを付け、加入を促します。

 朝市の売り上げの一部を財源に充てています。近隣の温泉施設などでも使用でき、これまでに約2100枚の割引券が発行される好評ぶりです。今年3月には高齢者がポイントを活用して草刈りや墓掃除などを依頼できるサービスにも着手しました。

 同公民館の豊田忠作館長(65)は「将来は通院や買い物対策にもつなげたい。独り暮らしの高齢者でも安心して地元で暮らせる仕組みにしたい」と意気込んでいます。

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 割引券で買い物をする高齢者



 
 

                                                               

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