過去の受賞者

第11回読売福祉文化賞の受賞者(2013年12月)

 新しい時代にふさわしい福祉活動を実践している団体などを顕彰する「第11回読売福祉文化賞」の受賞者が決まりました。東京でのオリンピック・パラリンピック開催が決まった今年は、一般部門で脳性まひ児によるサッカーの支援活動をしている「NPO法人CPサッカー&ライフ エスペランサ」(川崎市)など3団体が決まり、高齢者福祉部門では、高齢者や障害者が安心して楽しい旅行や外出が出来るように介助活動をしている東京都内のNPO法人など3団体が選ばれました。贈呈式は12月6日に行われ、各団体には活動支援金として100万円が贈られました。受賞団体の活動を紹介します。

【一般福祉部門】

NPO法人「CPサッカー&ライフ エスペランサ」
(川崎市)

 秋晴れの空が広がった11月17日、横浜市青葉区のフットサルコートで、脳性まひなどの障害者を対象にしたサッカー教室が開かれました。
小学生の部に参加した児童たちは、コーチ役のフットサルの元Fリーガーからボールを奪い取ろうと、元気いっぱいに動きます。
参加した東京都中野区の小学5年本中野雅君(11)は「東京パラリンピックに出場するのが夢」と目を輝かせました。
運営する「CPサッカー&ライフ エスペランサ」(川崎市)は、パラリンピック正式種目の脳性まひ者7人制サッカー(CPサッカー)の普及と強化を目指し、2002年に発足。07年から参加対象を子どもまで拡大し、12年9月にNPO法人化しました。
 参加者は首都圏を中心とした7歳~40歳代の50人。普段は月1、2回、日曜に横浜市や川崎市で練習。年に6回、元Fリーガーらを招いたサッカー教室を開催しています。
 目的はサッカーを通じて体力増進や自立性、協調性、チャレンジ精神を育むことです。12年11月には韓国障害者サッカー団体と交流協定を結び、交流試合も開催しています。代表の神一世子さん(43)は「サッカーは誰もが仲間と楽しめるスポーツなので、拠点や参加者を増やしたい。こうした活動を全国に発信していければ」と話しています。

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NPO法人「SOHO未来塾」 (長野県松本市)

 障害者にとって、最も生活環境が整っている自宅で就労できる仕組みを作りたい――。自身も車いす利用者だった唐沢正明元理事長(故人)が、2003年に創設したのが、NPO法人「SOHO未来塾」です。
 たとえば、車いすの人は同じ姿勢で座り続けていると床ずれになりやすく、能力はあっても会社での勤務が難しいこともあります。同法人では、県内の障害者の在宅勤務を支援するため、パソコンの使い方を指導したり、週1回は障害者を訪問し、一人一人の状態に応じた仕事を紹介したりしています。
 仕事は、スマートフォン向けの位置情報の整備や、インターネット上の中傷やわいせつ画像などをチェックするといった内容です。パソコンを使って仕事をし、メールで報告するため、自宅でできます。同法人理事長の青木敏さん(68)は「仕事をしたいという障害者は多い」と話しています。
 在宅勤務を続けた結果、これまで20人近くが、東京や県内の企業に正社員として雇用されました。現在は約20人が在宅勤務をしているほか、約10人が同法人で指導を受けながら、仕事をしています。
 青木さんは「支援活動が認められてうれしい。これからも働きたい障害者と企業をつなげる役割を務めたい」と笑顔で話しています。

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手話エンターテイメント発信ネットワーク oioi (大阪市)

 健常者と聴覚障害者の約30人が、手話を交えたダンスやコントなどを披露しています。2005年の設立から8年間で、出演したステージは80回を超えました。
 副代表の西崎隆志さん(33)が大学生の時に聴覚障害者の友人から、「サークル活動に参加したことがない」と知らされ、手話パフォーマンスの合宿を企画。健常者と聴覚障害者が手話の歌や劇で盛り上がり、団体を設立しました。
 現在のメンバーは京阪神の大学生と社会人です。大阪市東淀川区の「市立市民交流センターひがしよどがわ」で、仕事や学校帰りに練習に励んでいます。聴覚障害者の苦労を喜劇化したコントをテンポ良く演じ、大きな身ぶりで踊ります。活動範囲は路上、幼稚園、特別養護老人ホームと幅広く、観客も健常者、障害者を問いません。
 活動のテーマは「バリアクラッシュ」。障壁のない社会を願うだけではなく、心のバリアを積極的に壊す意気込みを表しています。聴覚障害者で、代表の岡崎伸彦さん(31)は「oioiという団体名のように、おいおい、と言われるくらい熱い活動を続ける。面白い表現を追い求め、社会の啓発にもつなげたい」と話しています。

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【高齢者福祉部門】

NPO法人「ホームレス自立支援市川ガンバの会」 (千葉県市川市) 

千葉県市川市の路上生活者の自立支援を目的に、1997年に発足しました。会の職員が保証人となり、これまでに約360人が自分名義のアパートに住めるようになりました。発足当初からのメンバー鹿島美紀子さん(54)は「家族のように心配したり泣いたりしてきました。受賞できてうれしい」と話しています。
 元々はボランティア団体としてスタート。夜間パトロールなどでおにぎりや医薬品を配り、路上生活からの脱却を勧めてきました。職員が保証人となることで、身寄りのない路上生活者がアパートの賃貸契約を結べるようになったほか、生活保護費受給のための手続きなども手伝ってきました。
 路上生活者は高血圧やアルコール依存症に陥っているケースが多いのが現状です。事務所内では、アパート入居後も職員が血圧測定や金銭管理の相談に乗り、憩いの場にもなっており、ある男性(69)は「アパートに帰ると独りぼっちだが、サロンでは寂しくない」と表情を緩めました。
 支援対象者は高齢者が多く、毎年、支援中に何人もの人が亡くなっています。親族の引き取りもないため、会ではこうした人たちのために墓地を建設しました。これまでに7人の遺骨が納められました。鹿島さんは「自分の『生きた証し』を覚えておいてもらえるという安心感を持ってもらえたら」と話しています。

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NPO法人高齢者・障がい者の旅をサポートする会 (東京都目黒区)

 「障害があっても、高齢でも、手助けがあれば旅は楽しめる」という思いから、久保田牧子理事長(68)が2008年に設立しました。専門知識を持ち、旅行に付き添って車いすや食事、トイレ、入浴などの介助する「旅サポーター」の養成講座を年2回開催し、旅サポーターは約200人まで増えました。
 伊勢や北海道、ハワイといった観光地だけでなく、散歩や出張にも付き添います。昨年は約50件の旅行の介助を行いました。ホテルやレストランがバリアフリーなのかどうかといった相談に乗るほか、各地の団体とも連携し、旅先でスムーズな介助ができるよう力を入れています。
 けがによって下半身まひになり、ふさぎ込みがちだった九州に住む男性は、旅サポーターとともに東京を旅行し、「自分にも旅ができる」と自信が生まれました。次の旅行を楽しみに上半身を鍛えるようになり、独り暮らしを始めて自立したそうです。
 久保田理事長は「1回の旅は1年分のリハビリに匹敵するといわれます。旅は人を前向きにする力があります」と話しています。旅サポーターをさらに増やし、利用者が気軽に旅行できる範囲を広げるのが目標だそうです。

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NPO法人よかよかネットワーク (福岡県大牟田市)

 毎週月曜の夕方、大牟田市小浜町の団地集会所前に移動販売車「よらんカー」が到着すると、高齢の住民が次々と集まってきます。
 「今日はいいミカンがあるんです」。よかよかネットワークで移動販売事業をほとんど1人で担当している小宮田鶴子さん(65)は、車から商品の詰まったケースを運び出しながら声をかけます。
 野菜、総菜、菓子、漬けもの......。手に取り、品定めするお年寄りは皆楽しそうだ。「甘酒もあるね」「このおかず、おいしかった。また買うわ」。会話も弾んでいます。
 同市の高齢化率は31・6パーセント(10月1日現在)。郊外型の大型店進出で住宅街の食料品店が激減した一方、自分で車を運転しなくなった人も多いため、「買い物難民」が増えているそうです。
 スーパーが撤退した地域などを回る移動販売事業を小宮さんらが始めたのは2011年9月。現在は福祉施設や公民館など15か所を、週1回訪ねています。
 買い物を通じてご近所どうしが顔を合わせ、おしゃべりを楽しんでいる様子を見ると、疲れも吹っ飛ぶという小宮さん。「受賞で活動を認められ、自信が深まった。今後は若手の販売スタッフも育て、全市に訪問先を広げたい」と意気込んでいます。

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