過去の受賞者

第15回読売福祉文化賞 6団体を表彰(2017年12月)

 新しい時代にふさわしい福祉活動を実践している団体などを顕彰する「第15回読売福祉文化賞」(読売新聞社、読売光と愛の事業団主催)の受賞6団体が決まり、12月8日に読売新聞本社内で各団体の代表らに来ていただき、授賞式が行われました=写真下=。各団体には事業団の長尾立子理事長から記念のトロフィーが手渡され、活動資金として100万円が贈られました。
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受賞団体は以下の通りです

【一般部門】
ふきのとう文庫(札幌市)
ホスピタル・プレイ協会すべての子どもの遊びと支援を考える会(静岡市)
せいかつをゆたかに実行委員会(堺市)

【高齢者福祉部門】
在宅介護を支える家族の会(山形県村山市)
あびこ・シニア・ライフ・ネット(千葉県我孫子市)
フラワー・サイコロジー協会(京都市)

各団体の活動内容などは12月7日の読売新聞で詳しく紹介されました。記事を元に各団体を紹介します。

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 ※各団体の写真は上が新聞に掲載されたもの、真ん中が贈呈式、下が贈呈式後の昼食会で挨拶する各団体の代表

公益財団法人ふきのとう文庫(札幌市中央区) 本読む喜びみんなに

 「すべての子どもに本の喜びを!」を基本理念に、障害を持つ子ども向けの本の製作や貸し出しに力を入れています。1970年に活動を始め、2013年、札幌市中心部に木のぬくもりに満ちた活動拠点「子ども図書館」を新設しました。
児童書を中心とした蔵書約1万4600冊中、約960冊が「布の絵本」。活動初期、重度障害の子どもを持つ親から「うちの子も楽しめる本はないか」と要望があり、米国から入手した布の絵本に着目し、手作りするようになりました。 フェルトなどを使い、ボタンを外したり、ジッパーを下げたりすると動物が現れるといったつくりで、指や腕の機能訓練などに効果があります。代表理事の高倉嗣昌さん(79)は「外で遊べなくても想像力が膨らむ。障害のない子どもと遊ぶきっかけにもなる」と話します。
弱視でも読める拡大写本も約400冊あり、字が大きいだけでなく、読みやすいゴシック体に書き換えて製本されていて、特別支援学校にも寄贈しています。
本づくりのボランティアは約50人。主婦らが裁縫の腕を生かし、1か月ほどで作ります。高倉さんは「後世に伝えるため、製作者の養成拠点や布の絵本の博物館もつくりたい」と意欲的です。(北海道支社 安井良典)
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NPO法人ホスピタル・プレイ協会(静岡市駿河区)病児らの緊張ほぐす

 遊びを用いて重い病気や障害を抱える子どもを支援する専門職「ホスピタル・プレイ・スペシャリスト」(HPS)を10年にわたり養成してきました。協会理事長で、静岡県立大准教授の松平千佳さん(52)は「どんなに障害が重い子どもも、自然体で過ごせる環境を作りたい」と話します。 子どもが緊張や我慢を強いられずに医療を受けられるよう促すのがHPSの役割。手術への理解を深めるため注射器で遊んだり、リラックスさせるため暗い部屋で電飾を触ったりする遊びを提供し、発達や病気に関する高度な知識も求められます。  15年前、社会福祉の研究で発祥地の英国を訪れた際、HPSの傍らで障害児が明るく笑う姿に心動かされました。「日本でも必要だ」と考え、2007年度に同大短期大学部に国内唯一の養成講座を開設。以来、これまで160人以上のHPSを輩出してきました。全国約90か所の病院や障害児施設、特別支援学校などで活躍しています。  ワークショップや国際シンポジウムも開き、普及や啓発にも力を入れていて 、松平さんは「多くの障害児が、自己実現できるようにサポートしていきたい。そのためには、ホスピタル・プレイの理念を、もっと全国に広げたい」と話していました。(静岡支局 吉広恵理子)記事2静岡.jpg

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せいかつをゆたかに実行委員会(堺市北区)知的障害者の恋愛支援

 お湯を張ったベビーバスに赤ちゃんの人形を入れ、ぬらしたガーゼで顔をそっとぬぐう。堺市で11月、知的障害者を対象に開いた性教育セミナー。参加した13人が妊娠する仕組みを学んだ後、乳児の入浴体験に挑戦しました。 「親から『結婚は無理』と言われた」「僕は結婚なんてできない」。千住真理子さん(65)は、勤務先の特別支援学校で生徒からそんな訴えを聞き、「恋愛や結婚をあきらめてほしくない」と2006年に始めました。 セミナーは毎年9月から半年にわたってほぼ毎月開催。福祉施設のボランティアらとともにビデオや模型を使い、毎回2時間かけて男女の体の違いや付き合い方、結婚、出産などを教えています。 「知的障害者や家族には恋愛や結婚に消極的な考えが根強かった」と千住さん。セミナーでは「臆病にならないで」と訴えてきました。2年前には参加者で初めて20歳代の女性が結婚し、男児を出産しました。千住さんは「活動が実を結んだ」と実感できたといいます。 09年からは保護者や支援者向けのセミナーも実施していて、「社会全体で理解を深め、知的障害者のすてきな恋愛をサポートしていきたい」と意欲を語りました。(大阪社会部 浦西啓介)記事3大阪.JPG

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在宅介護を支える家族の会(山形県村山市) 空き店舗に共助の場

 介護の悩みや苦労を1人で抱えがちな在宅介護者を支える活動を20年にわたり続け、近年は互いの悩みを相談したり、リフレッシュできたりする居場所作りにも力を入れています。  地域住民の要望を受けて1997年に設立。介護者らが公民館などに集まり交流する「集い」と、活動内容や介護の知識などを載せた会報の発行を毎月行ってきました。現会員は、村山、東根、尾花沢市、大石田町の約50人。  2015年には、集いの参加者から寄せられた「(要介護者と)一緒に外出できる場所が少ない」「不在になる数時間だけ(要介護者を)見ていてほしい」などの要望に応えるため、「支えあい館」を空き店舗に整備しました。 週3回、介護が必要な高齢者や障害者、その家族らが一緒に食事をしたり、カラオケや輪投げなどのレクリエーションを楽しんだりしています。会員以外の利用者も受け入れています。 代表の工藤美恵子さん(63)は「症状が軽くても、自宅でずっと介護するのは大変。介護する側もされる側も、居心地の良い居場所が必要」と話します。  新しい介護施設の視察や、介護教室の開催なども精力的に行っており、心地よい在宅介護の形を追い求めています。(山形支局 石塚恵理)記事4山形.JPG

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NPO法人あびこ・シニア・ライフ・ネット(千葉県我孫子市)PC教室など手頃に

 高齢者向けのパソコン教室を中心に、庭木の剪定から、蛇口の水漏れまで、少額の謝礼で高齢者の悩みを解決する有償ボランティアに取り組んでいます。  理事長の佐々木敏夫さん(84)は、定年まで東京都内の民間企業で働いていましたが、「退職したら、地域に友人が全然いなかった」といいます。そこで、地域での新たなつながりを求めて2002年、高齢者宅でパソコンの使い方を指導する有償ボランティアを始めました。  利用者らと茶飲み話をするうちに、「庭の木が伸びている」といった日常の悩みを聞くようになりました。庭仕事など自分の専門外のことは、知人に対応してもらいました。高齢者の多様な要望に応える活動は口コミで広がり、04年にNPO法人となりました。  カラオケクラブでの地域コミュニティー作りや、防災機器の取り付けなども行います。有償でサービスを供給する「活動会員」は30人。サービスを受ける「利用会員」は660人にまで広がりました。活動会員は1時間1200円で、利用会員の要望を請け負う仕組みです。  佐々木理事長は、「老後も働き、少しでもお小遣いをもらいながら、楽しい生活ができる。そんな人の輪を広げていきたい」と話します。(千葉支局 大嶽潤平)記事5千葉.jpg

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NPO法人フラワーサイコロジー協会(京都市右京区)生け花で認知症ケア

 生け花を認知症ケアなどに生かす「いけばな療法」を発案し、その普及と研究に取り組んでいます。花の香りや色彩によって五感を刺激したり、様々な花を組み合わせて個性を表現したりする生け花には、脳を活性化し、認知症の周辺症状を和らげる効果があるといいます。 いけばな療法では、複数の花から好きなものを選ぶ▽花の名前や旬の季節を当てる▽完成作品を互いに褒め合う――などコミュニケーションを重視した要素を盛り込み、患者が能動的に参加できるようにして効果を高める工夫を凝らしています。 理事長を務める浜崎英子さん(52)が2009年に設立。京都市内を中心に十数か所の高齢者施設を訪問し、これまで延べ約2万5000人の認知症患者らに体験してもらってきました。いけばな療法を実施できる「フラワー・サイコロジスト」の資格認定も実施。華道と心理学の基礎知識を学ぶ講座を受けた10人が取得しており、浜崎さんとともに活動しています。 臨床データの蓄積といった研究にも取り組んでおり、来年度をめどに学会の設立も目指しています。浜崎さんは「性別や年齢を問わず、多くの人が実感する花の癒やし効果を科学的な療法としても普及させていきたい」と話します。(京都総局 秋山原)記事6京都 .JPG

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